COLUMN:建物は何の目的(テ−マ)で造るのか?

 建築家オ−トワグナンとホッフマン(※)両氏の建築概念は、大いに現代の建築士に影響を与えるものとなった。彼らによって現代建築の始まりとなった。
 建築は社会の文化・発展に伴いその用途は複雑となり、建築(物)は単に人間生活を自然(雨・風・日射)から保護する物のみではなく、積極的に社会や文化の状態を表現する物へとなった。
 建築の基本は人間を尊重する立場にたち(住み手重視)、人間を愛する情熱の心をぶつけて創作するものであり、そして自然と人間生活(建築)とを融合させ工夫し配慮する造形が、設計でありデザインである。デザインの中でも、写真などで視ることができる2次元的デザインと、空間としての光を意識した3次元的デザインがあり、特に後者が重要だと思われるが、双方がかみ合ったものを産み出せたとき我々建築士は勝利を感じることができる瞬間である。
 近代建築を簡潔にまとめると、構造の合理化と用途に伴う機能を基盤に持ち、近代科学の可能性と材料の可能性の追求を栄養とすることで、人間の幸せに貢献するのを第一条件として発展してきたものであるが、しかし物質的な豊かさを求め、エネルギ−や資源を大量に消費する今日の社会での経済活動は、自然界における生態系に影響を及ぼし、地球環境にも大きな変化をあたえている。
 そこで豊かで快適で健康に良い環境を、次世代へと受け継いでゆく為にも、私たち建築士は、改めて自然のもたらす恵みに深く思いを巡らすと共に、大気・水・土壌等による自然系の均衡と循環が如何に重要であるかを認識する必要がある。
 上記を踏まえた上で「共生」「循環」「参加」の3つをキ−ワ−ドとし、これまで以上に環境の保全に努めなくてはならない。

※ホッフマン(Josef Hoffmann 1870〜1956 オーストリアの建築家)
ヴィーンの美術学校でオットー・ヴァーグナーに学び、1897年、27歳のときに、J.M.オルブリヒらとヴィーン・セセッション(分離派)運動を起こした。やがてこの運動から別れ、ラスキンやモリスのイギリスでの工芸運動に刺激されて1903年ヴィーン工房を創設し、青年派様式の指導者として家具、工芸品を設計、指導した。その指導精神はバウハウスよりいっそう手工業的、一品製作的で、パトロンの援助打切りとともに1933年閉鎖した。作品の中でストクレ氏邸(ブリュッセル、1905〜11)はもっとも有名である。

 

設計者としてのテ−マ

1. 人間の成長する空間造り
2. 機能的・流動する空間造り
3. 人の為のゆとりある、住空間造り
4. 家相を考慮する

ヒントとなる事項

a. 空間作りの原則に留意すること
b. 柔軟な空間作りの仕組みを用意すること
c. 個性を表現できる仕掛けを用意すること
d. 周辺環境に調和していること

『 配置 』『 間取り 』『 安心な住まい 』『 空間と形 』『 街並み 』を考える。

 

1.家の配置には

A.中庭型タイプ
B.外庭型タイプ

上記の住居概念があるが中庭タイプは家相・風水的にはあまり良くないとされているが土地の形状・場所によっては計画する上では必要なときもあるので有効である。

 

2.間取りを考えるには

a.部屋の連続性と独立性+αゆとりのスペ−ス確保

b.子供の成長と部屋割り等 (住要求の変化に対応する)
 吹き抜け空間でむすんだ方法
 可変形住宅

c.現代型の接客空間の工夫

d.趣味を住まい造りに取り入れる

e.個人空間を充実させる
 夫婦室・ウォークインクローゼット・書斎
 子供室・ロフト
 収納室・くり抜き壁等の飾りスペ−ス

独立性と開放性は相反するものではあるが、これを融合させることができれば、その計画は良いものとなるだろう。

 

3.安心な住まいには

a.省エネルギーを考える

限りある資源を守り自然と仲良く暮らす為、エコロジカルな生活をしようと次世代省エネルギ−基準ができ、住まい造りも機能・性能が高水準でいて省エネルギーにも貢献し、更に風土にも適した安全で健康な生活が出来るものでなくてはならない。

  1. ゴミを出さない工夫
    ゴミ処理機の設置(補助金がでる自治体もある。)
  2. 冷暖房エネルギ−を20%削減の工夫
    断熱材・防水紙・防湿紙等による高気密・高断熱
  3. 生活用水に雨水の利用
    リタ−ン水の利用
  4. 自然エネルギ−の利用
    太陽光発電・風力発電(設備費がかかるが12〜13年で元が取れる)

生活用水の雨水利用、太陽光発電などは自然の力を利用した、つまり循環を目的としたものである。

b.長寿に対応する(バリアフリ−)

子供からお年寄りまで、誰でもが使いやすく暮らしやすい住まいの考察

  1. リフォームが簡単に出来る住まい
    (拡張性がある住まい、プレハブで対応出来ない住まい )
  2. 家族が気持ちよく暮らす住まい
    (プライベートスペースと共にオープンスペースにも重点をおく)
  3. 五感にやさしい住まい
  4. 健康的な住まいを考える(自然素材を使用する)

将来的な変化を見据えて計画することができればその家は住み手にとって愛着が生まれ永く付き合えるものとなるだろう

c.高耐久・高耐震の住まいとする(建築構造技術)

  1. 建物の形と重さをチェック
    偏心が充分小さいか?(壁バランスは良いか)
  2. 基礎と土台をチエック
    基礎と土台の接合部(アンカーボルトの長さ・配置)
  3. 耐力壁の量と配置をチエック
  4. 筋違いの入れ方・合板等の張り方・接合金物をチェック
  5. 長持ちする住まい造りのポイント
    ◎基礎は一体の鉄筋コンクリ−ト造とするH=400以上
    ◎床下・小屋裏の換気を適切に行い通風を良くする
    ◎柱サイズを太くして耐久性をアップ
    ◎防腐・防蟻措置を施す

日本は地震が多発することは既知であるが、外観・雰囲気を重視する傾向がある。もちろんそれらも(外観等)重要なファクターではあるが何事においても基盤が重要でありこの部分を手を抜くことは、最も許されないことである。

 

4.空間や形を楽しむ

A.開放的な家を作る(自然との共生)

  1. 中庭型タイプ
  2. 外庭型タイプ

B.素材を活かす

  1. 木のぬくもり
  2. ガラスの透明性による一体感
  3. コンクリ−トによる重量感
  4. 鉄骨による軽量化・粘り強さ(長大スパンの建築が可能)
  5. 紙・素材の光透過・陰影
  6. 土壁による息吹き

素材を活かすといって素材そのものに頼りきるものではなく、適材適所にそれを配置・設置することにより、その良さをより引き出させる計画が重要である。

 

5.街並みに参加

街並みを構成する要素の中には建物の形態・色彩等を揃えた方が良い物と揃えない方がピッタリくるものがあり、その組み合せで街並みは、美しくなり味わい深い物になる。
又、居住区通路も曲線により、淀みをもたせることも、おもしろい。

  1. 街によっては法的制度・地区計画・建築協定制度がある。
  2. 歴史的な伝統文化による色規制がある。
  3. 西洋的シンメトリ−の対称型と日本的な織部の非対称型や光と陰の考え方、凸凹の考え方がある。
  4. 道に気配を伝える。
  5. 小さな店で街に活気を与える。
  6. 車が見えない駐車場。(歩車道分離)

単純に我が家が・・・という考え方を改め隣家との協調性を持たせることによってその近隣を良い雰囲気にすることも可能であろう。

 

最後に、前述したが、自然と人間生活(建築)とを融合させ、これを工夫することが私たちが考える建築デザインであり、その様な空間を提供していきたい。