COLUMN:リフォ−ム工事の上手な進め方

改修新時代 第32回なごや2002建築総合展より

 リフォ−ムの動機は様々ですが、「設備が古い」「建物が古い」と言ったものから「家族構成の変化に合わせもっと快適な住まいに作り変えたい」という積極的なものへ移行する傾向にあります。それだけに、工事内容も複雑になり、リフォ−ム工事に関わるトラブルもあとを絶ちません。どうやったら、リフォ−ムを成功させることが出来るのか…。リフォ−ム工事の上手な進め方、工事の依頼先の選び方などについて考えてみたいと思います。

 

 「リフォ−ムしたいけれど、何から手をつけたらよいのかわからない」という声をよく聞きます。 リフォ−ムと言えども新築の時と手順は一緒。まずは、リフォ−ムの目的を家族内でしっかりと話し合うことから始めましょう。
 リフォ−ムが新築と違うのは、「今ある家を元に考える」ということ。どんな家で「どんな暮らし方をしたいのか」を家族みんなで話し合う際に、今の家の不満点を挙げていくと、意外と簡単に望む形が見えてくることがあります。素人考えで「こんなことは絶対に出来ないだろうから」と始めから希望を捨てるのではなく、「こうなったらいいな」という事柄を率直に伝えると、意外と簡単に解決する事も多くあります。又、長年住んでいると、間取りの取り方や家具の配置など固定概念に縛られて新しい発想がなかなか湧きにくいものです。「ベッドと机がきちんと配置出来る独立した子供部屋がどうしても3室必要だ」とか「キッチンから庭へ、直接出られるようにしたい」といった、生活の言葉で伝えれば、思わぬ解答が専門家から投げかけられることもあるはずです。

 

「より快適な住まいを求めて積極的な情報収集を」

 リフォ−ムのおおまかな目的が定まったら、情報収集です。インテリア雑誌や、リフォ−ムの本、インタ−ネット等・・・今はその気になればリフォ−ムの情報は身近に溢れています。近所に住宅設備機器や内装材料のメ−カ−のショ−ル−ムがあれば足を運んでみるのもいいでしょう。最新の商品の実物が自分の目で確認出来ますし、最近では使い勝手を実際に体験出来るショ−ル−ムが増えています。
 工務店やリフォ−ムショップ等でも、ショ−ル−ムやモデルル−ムを作っている所があります。こういった所なら、1つのメ−カ−に限定されることなく、工事事例 として色々な場面をみることが出来ますから、更に具体的なイメ−ジが膨らむかもしれません。情報を収集した後は、情報を取拾選択し整理します。実はこの部分をやらずにリフォームに取り掛かってしまう方が多いですが、これだけの情報化時代、情報は集めただけでは役に立ちません。逆に情報に踊らされて自分たちにとって 本当に必要なものが何なのかわからなくなってしまう危険性さえあります。
 あれもこれもと最新の物を闇雲に詰め込んでも、決して住みやすい家は出来ません。集めた情報に優先順位をきちんと付けて、広さと予算をにらみながら調整することが大切です。出来ればこのあたりの作業から、専門家に関わってもらうのが良いと思います。専門家なら望む住まいの形を、確認出来れば、必要な設備や内装材を、適格に選択し体系的に住空間を組み立てることが出来るからです。

 

「プランと見積もり」

 リフォ−ムをする時に一番悩むのが工事の依頼先だと思います。リフォ−ムの内容に合わせた依頼先については後述しますが、基本的には数社の業者に当って、その中から1社に決めるのが一般的ではないでしょうか。方法としては、リフォ−ムの目的とおおまかな予算を告げてプランと概算見積もりを提出してもらい、比較検討することになります。「予算を告げると足元を見られる」とか「いくら掛かるか分からないから」という理由で予算をはっきりおっしゃらない方も多いようですが、リフォ−ムの内容をきちんと理解してもらう為には予算をはっきりと告げた方が良いと思います。業者としては、予算を知ることによって、望む工事の規模が把握できますし、それに合ったプランも提出出来るからです。又、プランと見積もりを出してもらう前には、現場を実際に見てもらうのが原則です。プランと見積もりが出てきたらこの時点で業者を決定します。リフォ−ムは大仕事ですから価格だけで決定するのは危険です。特に大規模な工事の場合は、工事にかかってかかってからでないと正確には判断出来ない部分の価格というのが、必ずありますから、それを意図的に隠して(あるいは技量不足から読みとる事が出来ずに)後から追加金額を出すタイプの業者と、良心的に最初からその価格を多めに見込んで、きちんと計上している業者を同じ土俵で比較することが難しいからです。
 価格と希望を、どれだけうまく形にしてくれたかのプラン力のバランスで決めるのが間違いない方法です。中には、業者を決定する前に何度もプランを出し直させたり、価格交渉をする方がいますがリフォ−ムに関して言えば、これは無意味だと思います。工事を依頼する意思表示をした後、工事を頼むと決めた業者とがっぷり四つに組んで、両者が連携してプランを練り上げ。ぶれのない見積もりを提出してもらって、契約する方が、結局は上手く行くことが多いものです 。

 

「悔いの無いプラン作りと工事発注の仕方」

 最終見積もりが出てきたら、工事内容を確認します。分からないことは曖昧なままにせず、納得のいくまで説明してもらうこと。家財道具の移動や掃除、ごみ処理等の分担範囲も明確にしておかないとトラブルの元になります。
 金額と同時に工事期間も決定します。完成期日の希望がある場合は早めにはっきりと告げて、余裕を持って着工するようにします。リフォ−ム工事は、住みながらする場合と、空にして工事する場合がありますが、前者の方が工期もながくなりますし、その分、割高になりがちです。大規模工事の場合は思い切って工事期間中仮住まいをすることをお勧めします。全てが決定したら契約します。工事の大小に関わらず工事業者とは「工事請負契約書」を交わしましょう。工事内容・請負代金の額・着工の時期と完成の時期・請負代金の支払い方法と併せて、設計変更や工事中止の場合に生じる損害負担・火災等の不可抗力の損害負担、工事中の保険等についても、明記されていれば万全です。どんなに綿密にプランを練っても、工事中に追加や変更したくなる箇所は出てくるものです。いざ工事にかかってしまうと、職人さんに妙に気をつかって言いたいことも、我慢する方が意外と多いのですが、自分の家なのですから後悔のないように頼んでみましょう。言いたいことをうまく伝えられる様な良好な人間関係を築いておくことも、リフォ−ム成功の極意の一つです。但し着工後の追加・変更は 高くつくと肝に銘じて置いてください。
 工事が完了したら入居する前にきちんと工事内容を確認する事。入居後、不具合があった場合のアフタ−サ−ビス窓口も確認しておくと安心です。

 


 

 「リフォ−ム」と一口に言っても、修繕程度の簡単なものから、建て替えに近い大規模なものまで、その内容は千差万別。工事業者も得意な分野と不得意な分野がありますから、希望の工事内容に合った業者選びがリフォ−ム成功の第一歩です。

 

リフォ−ムの種類

1. 具合の悪いところを直す

 第一は、「取りあえず具合の悪くなったところを直す」という補修や修繕の感覚に近いもの。雨漏りするので屋根を直すとか、お湯が出なくなったので、給湯器を新しく替える、畳が古くなったから表替えする、といった内容の工事で、今までも気軽に頼んでいたようなことです。

2. 最新設備機器に替える

 第二は、最新の設備機器や流行のインテリアを取り入れたリフォ−ム。古くなったキッチンを、システムキッチンに取り替えたり、カ−ペットをフロ−リングに替えたり、和式便器を洗浄便座の付いた洋式便器に取り替えるといった部分別リフォ−ムで、言わば住まいの化粧直しといったところです。今行われているほとんどのリフォ−ムは、かなり大規模なものでも、部位別リフォ−ムを積み重ねた形の、このレベルのものが多いようです。

3. 家自体のコンセプト変更

 第三が大きな間取り変更まで含めて、家自体のコンセプトから作り替えていくもの。長い年月の間に家族構成も変わり、ライフスタイルも変わって、今の住まいの形ではどうも暮らしにくい、という方が取り組むリフォ−ムです。

 

タイプで変わる依頼方法

 いずれも「リフォ−ム」と一口で片付けられているので、何処に頼んでも同じと思っている方も多いのではないでしょうか。実はどのタイプのリフォ−ムを望んでいるかによって、工事の依頼先や依頼方法を変えた方が思い通りのリフォ−ムが出来ます。

 例えば、第一の「修繕型リフォ−ム」なら、近所の畳屋さんやガス屋さん、家を建ててくれた大工さん等が適任です。近いのですぐに立ち寄ってもらえるでしょうし、広告や人件費等の経費がかかっていない分、良心的な価格設定の事も多いようです。上手くいけば今後の長いお付き合いも期待できます。「ちょっと棚が欲しい」とか「水が漏れる」といった日常の不具合も気軽に相談できる間柄になっておくと安心でしょう。

 第二の「ポイント型リフォ−ム」なら、やはり家を建てた大工さんかリフォ−ム工事の実績の豊富な町の工務店や、少し大きなリフォ−ムショップなどに頼むと良いでしょう。最新の設備のことなどを熟知していて、そのメリットばかりでなくデメリットやメンテナンスのことについても詳しい担当者がいれば安心。
 キッチン・浴室など直したい部分がはっきり決まっている場合は、キッチンメ−カ−や衛生設備メ−カ−のショ−ル−ム に出かけて、そこで地元の評判の良い工事業者を紹介してもらうのも賢い方法だと思います。

 第三の「高付加価値型リフォ−ム」を望む場合は、企画提案力のある専門家と組まなければ成功しません。今ある家を活かしながら、全く新しいコンセプトの住まいに移行させるのですから、新築住宅を設計するよりも難しいと言っても過言ではありません。最近は工事業者とは別に設計監理を設計士に依頼する方も増えてきました。もちろん、工事代金とは別に設計料が必要ですが、少なくとも第三のタイプのリフォ−ムに真剣に取り組む為には「設計見積もり無料」というわけにはいきません。但し「高付加価値型リフォ−ム」だからといって工事代金が高くなるわけではありません。上手く設計すれば、以外と安い予算で思わぬ効果を得ることも可能です。

 

一戸建て、マンションでは違う依頼先

 リフォ−ムのタイプと併せて現在の住まいの型も工事の依頼先を決める際に考慮しなければならない点です。
 一戸建てとマンションでは、建物の構造が全く違うので、リフォ−ム工事の内容も異なってきます。特にマンションの場合やって良いリフォ−ムと、してはいけないリフォ−ムの内容が、区分所有法という法律できちんと定められています。これを守らないと、場合によっては、現状復帰を課せられる場合もありますから、注意が必要です。やはりマンションならマンションリフォ−ムの実績が豊富な業者に頼むのが得策です。同じマンション内で上手にリフォ−ムされたお宅があれば、業者を紹介してもらうのも一つの手です。いずれにしても、リフォ−ムをする際には、その目的・予算をある程度はっきりさせてから、取り掛かることが一番大切だと思います。

 

リフォ−ム耳寄り情報

相談できる専門家

リフォーム相談に関しては、建築士やインテリアコーディネーター、インテリアプランナー等の他、以下のような専門家がいます。

・増改築相談員

大工等として住宅建築の現場に10年以上携わっている者、あるいは、(財)住宅リフォ−ム・紛争処理支援センタ−に登録されている者。

介護保険の住宅改修

介護保険において、住宅改修に付帯する段差の解消などの改修に要した 費用20万円までについて最高9割(18万円)が保険で支給されます。 住宅改修費の支給申請は、介護保険居宅介護住宅改修費用申請書・改修に要した費用の領収書・住宅改修が必要な理由書・完成後の状態が確認できる書類などを添付して、市町村窓口に提出します。